おむすびマガジン 第43408号
2022.7.19発行

【隠居屋インタビュー】個性的なメンバーが織りなす贅沢空間を楽しんで! ヴィーガンカレー、ビリヤニ、レコード、自家焙煎の珈琲を提供しているカフェユニット「珈琲音楽」

心地よいレコードのBGMの中でヴィーガンカレーやビリヤニ、自家焙煎の珈琲などが楽しめる空間があります。聞けばこの空間、男性3人によって生み出されているのだとか。

大正時代の建物や四季折々の草花が楽しめる「つながる古民家 隠居屋 IN kyo-Ya」や、曜日で店主が変わるカフェ「OneTable」などで活動しています。

コンサートなどのイベントも手がけるカフェユニット、珈琲音楽の皆さんはどのようにして出会い、今のような活動をするようになったのでしょうか。

omusubiスタッフの宇田川と庄司が、珈琲音楽のナガオカさんと増井さんにうかがってきました。(残念ながら、タガヤスさんは欠席でした)

プロフィール

3人の多才な個性が織りなすカフェユニット。「心地よい時と音と場」をテーマに、レコードを流しながら自家焙煎による珈琲や厳選したノンアルコールビールを、カレーやビリヤニ、パンやスープなどの食事やスイーツと共に提供している。“4人目”の珈琲音楽メンバーが写真にうつっている理由は、このあとインタビューで明らかに!

●KAFFE FIORI
ナガオカ キョーノスケ(左から二番目)
珈琲音楽のコーヒーと音楽を担当。Last Yellow Dove 名義で音楽活動。自身による楽曲をアナログレコードで各レコードショップにて販売。珈琲音楽では、自身でセレクトしたアナログレコードを流し、店内ムードを演出している。また、主催する音楽イベントのチラシなどのデザインも手掛ける。
レコードオンラインショップ例
https://www.jetsetrecords.net/i/814005751499/

●NO WAY THE VEGAN CURRY
増井 康人(一番左)
珈琲音楽のカレー担当。ジュエリーデザイナー。カレーよりも以前からジュエリーを制作・販売しており、珈琲音楽のカフェ営業時も物販展開している。

●magari Biryani pLow
タガヤス(右から二番目)
珈琲音楽のビリヤニ担当。イラストレーター・造形作家の一面がある。珈琲音楽のロゴをデザインしたのも彼。また、音楽イベント時には、特別なポスターを制作し、お越しいただいたミュージシャンにプレゼントすることが恒例となっている。人となりが分かるような愛くるしい作品を作っている。

カレーが結びつけてくれた、多才な3人の縁

――本日は、カフェ営業にお邪魔しました! 珈琲や音楽、ヴィーガンカレーにスイーツ、皆さんの明るいお人柄など、いろいろな要素が詰まったすごく楽しい空間だと感じましたが、皆さんはどのようにして出会ったのですか。

ナガオカさん:もともとは、増井くんとぼくが会社の先輩と後輩だったんです。雑談の中で音楽の趣味が似ていることがわかって、いつか一緒に何かできたらいいねという話をしていました。ぼくは10年ぐらい前から場を作るということがやってみたくて、どうしたら実現するかということをずっと考えていたんです。

そんな中、共通の知り合いがやっているインディアンカレー屋さんに増井くんと行ったら、タガヤスさんが来ていて、そこで意気投合して、3人が出会ったという経緯です。

――増井さんのカレーへの興味は、昔からだったのですか?

増井さん:そうですね、昔からカレーは好きで、スパイスカレー研究部という集まりに所属したりもしていました。でも友人が作ってくれる美味しいカレーをどうにかして再現したいと、試作を重ねてヴィーガンカレーを作ったんです。

フィンランドや台湾に行ったときに、ヴィーガンの方が多かったこと、ヴィーガン料理が美味しかったことが、ヴィーガンに興味を持った理由ですね。「えっ、お肉入ってないの?」という驚きと楽しさがあり、これはもうエンターテイメントだと思いました。ひとつのお題として、「動物性のものは使えない」という制限の中で料理をするのも楽しいんですよ。

ただ、体質的に向き不向きもあって、ぼくの場合は完全にヴィーガンの食生活にすると痩せていってしまうので、少量のいいお肉とチーズはOKにしています。

――ふむふむ。そこからカレー作りにのめりこんでいったんですね。

2019年に、スパイスカレー研究部の一員として、アマチュアカレーグランプリという大会に出たら優勝したんです。そのとき、大いなる何かに、「カレーを作りなさい」と背中を押してもらったような気持ちになりました。

――実際にこのような活動を始められたのはどんな経緯だったのですか。

ナガオカさん:10年ぐらい前から、いつか場を作って活動してみたいという思いがありました。喫茶店文化やカフェ文化が好きで、非日常感を感じられる場を演出する側になりたいという気持ちがあったんです。わかりやすく言えば、喫茶店のマスターへの憧れですね。

焙煎機を買って珈琲の焙煎を始めたら、季節や気温によってもできあがりが微妙に違って、実験のようで非常に楽しかったんです。正解や答えがない楽しみがあって、いつかお客さまに提供できたらいいなと考えていた2019年に、増井くんがカレーの大会で優勝して、これはいいタイミングだと思いました。

地元の松戸で間借り営業をはじめようと、「松戸 間借り」で検索したらomusubi不動産を見つけて。問い合わせをしたときに、教えてもらったのが隠居屋さんです。実際に見学に行ったら風情があって、すぐに場所をお借りして定期営業を始めることを決めました。

隠居屋さんのくつろげる空間と音楽は相性がいい

https://youtu.be/DLE09742f2Y

“咖喱と珈琲と音楽と Vol. 1″ 曽我部恵一弾き語りコンサート

――実際に隠居屋さんで定期営業を開始されてからはいかがでしたか。

増井さん:庭の色鮮やかさや、ゆったりとした空間がもたらす居心地の良さを、お客さんも感じとってのんびりしていただくことが多くて、こちらも営業しながら癒されていました。

ナガオカさん:キッチンも広くて使いやすいんですよね。通りを一本入っただけで別空間が広がるので、ぼくが大切にしている非日常感も存分に感じられる空間だと思います。

――隠居屋さんでは「咖喱と珈琲と音楽と」やコンサートなどの音楽活動も開催されていますよね。

ナガオカさん:建物の雰囲気もいいですし、隠居屋さんの小上がりがコンサートにぴったりなんですよね。もともと音楽が好きなので「自分の好きなミュージシャンの演奏を皆さんと一緒に聴けたら」という思いから企画し、出演を交渉して実現しています。今後も音楽イベントについては企画していきたいですね。

――松戸についてはどんな印象をお持ちですか?

増井さん:個人で何かをやる人に対してのサポートが厚いと感じます。何かをする場を見つけやすいですし、そういった人どうしのつながりも強いですね。

自分たちらしさを大切にしながら、外部とのコラボで生まれるものも楽しんでいきたい

左から、「謎の4人目」さん、ナガオカさん、増井さん。

――プロフィール写真にうつっている4人目の方は?

増井さん:実はぼくの小学校の同級生なんです(笑)。カフェ営業って、お客さまと話すのも楽しいんですけど、オーダーもさばかなければいけないので、ずっと話しているわけにもいかないのがちょっとしたジレンマだと感じていました。そんなときに彼がいてくれると場の雰囲気がなごむので、ちょっとした実験として営業の場にいてもらっています。

ナガオカさん:1980年代後半のイギリスのバンド、ザ・ストーンローゼズが本当はメンバー4人なのに、後ろで踊っている5人目がいるという遊び心が好きで、真似させてもらいました。

――ちょっとしたユーモアなんですね(笑)。コンサートなど、いろいろな方とのご縁を大切にして活動をされているようですが、どのようにつながりを広げているのですか。

ナガオカさん:この活動を始めてから、「自分も何かやりたい」と寄ってきてくれる方がけっこういるんです。ゆるく営業しているので、話しかけやすいと思ってもらえるのかもしれません(笑)。

最初はお客さんとして来てくれて、似顔絵を描いてくれたイラストレーターの方や、コラボしてイベントをしたフラワーアーティストの方などもいます。「類は友を呼ぶ」という言葉の通りだと実感していますし、音楽の和音のように、これからも違う文化を持った人とコラボしていろいろな仕掛けをしていきたいですね。

――「音楽の和音のように」という表現、とても素敵です。今後、どんな活動をしていきたいですか。

増井さん:お客さまとお話ししたり、提供するものを味わってもらったときの笑顔を見ると喜びとやりがいを感じます。お客さまに何かを提供するだけではなく、もう一歩進んだ関係になれたらと思いますし、そういう関係性を築ける人は宝物だと感じています。今後も面白い人を巻き込んで、どんどん楽しいことを企画していきたいと考えています。

ナガオカさん:最終的には店舗を持ちたいということは考えています。今までやってきたことを積み重ねて、少しずつステップアップできたらなと思いますね。もちろん、今の間借りの形態も好きなので、しばらくは続けていけたらと思っています。

珈琲も好きですが、それだけにこだわるというよりは、空間をプロデュースしたいという思いで活動しています。自分が作ったものを喜んでもらえることは、少し大袈裟かもしれませんが人生の目標を実現できたという思いもあるんです。今後も自分たちのペースで、僕たちらしい空間作りを楽しんでいきたいですね。

――皆さんの多才さが表れた音楽やおしゃべり、食べ物や飲み物が混じり合った空間は、まるでいろいろなスパイスや材料が溶け合った極上のカレーのようでした! きっとそんな空間や人柄が自然とつながりを広げていくのでしょうね。今後の活動にも期待しています。 

珈琲音楽
OneTableにて第2土曜日10:00〜17:00営業中
日常の活動を紹介しているインスタグラムはこちらhttps://www.instagram.com/coffeeongaku/


取材/omusubi不動産 庄司友理佳 宇田川理絵
文/宇田川理絵 
写真提供/珈琲音楽