おむすびマガジン 第42382号
2022.5.30発行

長いお付き合いにしたいから、入居者は丁寧に選びたい。武蔵小山に物件を持つ大家さんインタビュー

omusubi不動産では、自由に内装を変えられたりDIYができたりと、いわゆるふつうの不動産物件とは異なる条件の住居や店舗を多くご紹介しています。

そんな物件をご紹介できるのは、omusubi不動産の考え方を理解して、いろいろなことを許容してくださる大家のみなさんがいるからこそ。

2021年に、武蔵小山にオープンした寿司バル「寿司とMAS」が入居した物件も、よい大家さんとの出会いがあってご紹介に至ることができました。

大家の嵩村さんは、ふだん映画美術監督をされていて、京都の美術大学でも教鞭をとっていらっしゃる方。入居者募集から契約に至るまでのことを、担当の溝井とともに振り返ります。


次に貸すなら、プロを仲間に

溝井
改めて、嵩村さんが大家さんになるまでのことを教えてください。

嵩村さん
ずいぶん昔の話になりますが、うちの家族がこの土地にやってきたのは戦争のときなんです。当時、祖父は蒲田から点々と住む場所を変えて、最後に武蔵小山に土地を借りて住み始めたそうです。

嵩村さん
その後、祖父から引き継いだ土地で母が賃貸業をはじめました。最初は2階建て、共同トイレの安い賃貸アパート。僕が小学校5年生のころだったと思います。退去した部屋の壁塗りと、草むしりは僕の仕事でした。ペンキは上達しましてね、小学生の割にはうまく塗ってたと思いますよ。

溝井
親孝行なお子さんだったんですね。

嵩村さんとお母さま

嵩村さん
それが仕事っていう感じだったんですね。40年前くらいに建て直しをしていて、私が引き継いだのは、1999年に母が亡くなってから。母は整理が得意じゃなかったもので、最初は契約書なんかがどこにあるのかわからなくてね。整理するのに半年はかかりましたよ。今は家内を中心に、大家業をやらせてもらっています。

溝井
ご相談いただいたのは、人が行き来する道路に面した店舗2区画でした。もともとはお寿司屋さんとスナックが営業していましたよね。

嵩村さん
はい、長いこと使ってもらっていました。途中でサブリースの話があってチェーン店のカレー屋さんが入っていた時期もあります。いろいろ勉強になりましたけど、素人がいくら調べても法律に関することには限界がありますよね。次に貸すなら、仲間としてプロに入ってもらったほうが、入居してくれる方とも長くいい関係を続けていけるなと思ったんです。

リノベーション前の物件の様子

溝井
omusubi不動産は武蔵小山に店舗があるわけでもなければ、この街の物件を多く取り扱っているわけでもありません。ご連絡いただいたきっかけはなんだったんでしょう。

嵩村さん
ほかの不動産屋も覗いてみたりはしたんですけどね、どうもピンとこないでいたんです。僕がぼーっとしている間に、うちの奥さんがパッとネットで見つけてきたのがomusubi不動産だったんですよ。やっぱり名前が印象的でしたね。なんか、テーマみたいなものがすぐに伝わってきました。それで連絡したら、翌々日くらいに社長さんと溝井さん2人で来てくれて。お人柄もわかりましたし、この方々だったらお任せできそうだなと思いました。

もったいないを大切に入居者募集

溝井
駅から徒歩3分で人通りもあって、陽当りもよくて。お店をやるにはすごくいい場所だなというのが第一印象でした。けれど嵩村さんは、なんだか不安そうに話していらしたのを覚えています。

嵩村さん
この先にタワーマンションができて人通りはありますけど、そうは言っても商店街は駅の反対側でしょう。借りる人が入らなかったらどうしようって思っていたんです。

溝井
最初は、飲食店じゃないところに入ってもらうのはどうかというお話でしたよね。酔っぱらいが溜まってしまうと周りに迷惑がかかってしまうし、次は物販をされる方がいいんじゃないかと。

嵩村さん
そうですね。裏には住宅もあって、静かな場所ではありますから。周りに迷惑をかけるようなことができるだけないようにしたいというのが本音でした。

溝井
募集の際、もちろん飲食店NGで出すこともできたんですが、お寿司屋さんの居抜きというのがもったいないなと思って。スケルトンにせず、今の内装を活かしながら、大家さんの持ち出し、つまりお金をかけずに貸しに出せる方法を模索できたらと考えていました。

嵩村さん
居抜きのまま募集を始めて、使えるものは使ってもらいましょうと話してくれたのは嬉しい提案でした。内装工事するだけでもたくさんゴミが出てしまいます。お米も捨てるところがないように、日本の文化って捨てないで循環させていくところがありますよね。捨てないで再利用するっていう発想は、とてもいいなと思っています。

溝井
ご挨拶に伺ったとき、嵩村さんが地元愛を話してくださったのも覚えています。この物件を通して、地元がもっといい場所にしたいと。

嵩村さん
長年住んでいるし、いいところだと思うんです。戦後は布の市場になったこともあって、前は生地屋さんや洋服屋さんがとても多かったんですね。それが2代目3代目になって、少しずつ場所を貸すようになって、個人商店が少なくなりました。

溝井
個人の方を応援したいというお気持ちは、募集する際の条件や家賃にも反映されましたよね。omusubi不動産のお客さまには個人でお店を出す場所を探している方も多いので、ご理解いただける大家さんなんだと、話を伺いながら感動していました。

うれしい誤算の企画審査

溝井
記事をつくってomusubi不動産のウェブサイトに情報を掲載したのが2020年2月の火曜日でした。募集を開始して、水曜日はお休みをいただく予定だったんです。だけど内見予約が朝9時半から夜の7時まで、30分おきに埋まっていって。これは現地に行って対応しなくちゃだめだ!ということで、あわてて出勤しました。

嵩村さん
うれしい誤算でしたね。入れ替わり立ち替わり、いろんな方が見に来てくださって。

溝井
今回は募集の条件として、企画審査というものを採用しました。ふつう物件を借りるとには申し込んだ順に話を進めていくんですが、今回は入居希望の方に、どういうふうに使いたいかを出していただきました。

提案書を出していただくのがちょうど初めての緊急事態宣言が発令されるころで、世の中的に新規出店は考えにくいような雰囲気がありましたよね。

嵩村さん
みなさん、相当な覚悟を持って応募してきてくださったのが伝わりました。詳細を見せていただいて、とても楽しかったですね。どんな方が、どんな想いで希望してくださっているんだというのが伝わってきて。拝見しているうちに、どの方も他人とは思えなくなってきてしまって。飲食店が多かったから、どうしようというのもあったのは正直なところです。

溝井
嵩村さんは物件の近くに住んでいらっしゃることもあって、日常的に関わることにもなりますからね。どんなにいい方で、いいアイデアであっても、大家さんが貸したいと思う相手であることが一番大切です。

最終的に入居いただくことになった「寿司とMAS」さんは、すでに武蔵小山でイタリア料理のお店を出している方でしたよね。イタリア料理のお店を出して、この街をすごく好きになったから、ここで事業を展開していきたいと夢を描いていらしたんです。人柄もよかったし、嵩村さんが大切に話してくださったことと重なる部分もあった。あとはお寿司屋さんの内装を活かしてくださるという点も大きかったと思います。

嵩村さん
うちの奥さんも何度かイタリア料理屋さんにお邪魔していたみたいで。そのときの印象がすごくよかったみたいなんですね。それで、大丈夫かなって。

日常のなかで、長く続いていく関係を

溝井
ちょうど昨日(2021年7月12日)オープンでしたよね。

嵩村さん
そうなんです。私は仕事で行けていないんですが、うちの家内と息子たちがお邪魔したみたいです。すごくいいお店ができたと聞いて、安心しています。

溝井
嵩村さんがオープンのお祝いに、ご近所の方々に配ってくださったカードが素敵だなと思っているんです。開店祝いの代わりに割引券をつくって、割引分は大家さんがご負担してくださって。目に見えるかたちで応援していることが伝わると、入居者さんも嬉しいですよ。

嵩村さん
うちの家内のアイデアなんです。近所の人も新しいお店って興味があると思うんですよね。きっかけがあれば入りやすくなりますから。せっかくできたらお店だから、長く続けてもらいたいじゃないですか。

溝井
お店をやる上で、ご近所のみなさんとの関係はとても大切ですよね。

嵩村さん
今大家業はほとんど家内にやってもらってるんですが、思ったより儲からないし、なにもやっていないようでけっこう気を使うんですよね。周りの人に迷惑をかけるようなことがないようにって。

溝井
今後も管理を担当させてもらいますが、なにかあれば迅速に対応できるよう、心がけていきたいと思っています。

嵩村さん
ここまでこまめに連絡していただいて、こちらの懸念点はすべて反映いただいて。omusubi不動産の仕事はよく見えるので安心していました。

建て替えを考えたこともあったけれど、建物ってちゃんと管理していれば長く使えるんですよね。せっかくいいお店に入ってもらったから、この建物を20年は持たせるようにしっかり管理していかないとねって話をしました。

溝井
20年のお付き合い。そこまで考えてくれる大家さんって、なかなかいらっしゃらないと思うんです。借りる側からしても安心してお店を続けられる環境はとても大切です。長期的な目線で考えてくださって、こちらも改めて気が引き締まります。

嵩村さん
お店を出す方も、一生に何度もあることではないですよね。お互い、長く続けることが大切じゃないですか。そんなに大きな利益はなくても、日常のなかで長く関係が続くということを目指していきたいと思っています。

溝井
これからもよろしくお願いします。今日はありがとうございました。