イベントレポート 第22801号
2020.1.20発行

贈り物にすると必ず喜ばれるお店、千葉のセレクトショップ“CB PAC”オーナー・柿木将平さんをお招きした「やはしらジオ」レポート

omusubi不動産が5周年を迎え、街の情報を等身大で伝えていきたいとスタートした「やはしらジオ」。代表の殿塚と本田の2人をパーソナリティに、omusubi不動産ゆかりのゲストをお迎えします。
 

(写真左から)本田、柿木さん、殿塚

 

2粒目の今回は、セレクトショップ「CB PAC」を営む柿木将平さん。鎌ヶ谷市初富本町に店舗を構える「CB PAC」は、リノベーションした古民家を使って千葉の“いいもの”を提供する、セレクトショップです。

長年の夢を叶えた柿木さんの開業に至るまでのエピソードは、心の奥底に眠っていた情熱が刺激される、なんとも“ロック”なお話でした。

 

青い外壁のお店「CB PAC」

殿塚:柿木さんは鎌ヶ谷市の初富本町でお店をやられているわけですけど、初富って正直、すごくマイナーな場所だと思っていて…。なぜこの場所を選んだんですか?

 

 

柿木さん:初富を選んだのは、今の物件が気に入ったからという単純な理由ですね。最初から、千葉の都市部にお店を構えようと考えていて。
だけど何ヶ月か探してもなかなかいい物件が見つからなくて、そんなときにomusubi不動産に仲介していただき、今の物件に出会えました。

殿塚:お店はご自分で全てDIYしたんですよね。どの辺からやられたんですか?

柿木さん:そんなに大掛かりなことはやっていないんですけど、畳を剥がして床を……

本田:めっちゃ大掛かりですよ!

一同:(笑)

柿木さん:床を古材に張り替えて塗ったり、壁紙を張り替えたり…。床と壁がメインですね。

本田:あの青い外壁は?

 

柿木さん:もともと、見たときからあの色でした。

殿塚:僕らがはじめて見たときは青じゃなかったんですけど、オーナーさんが工事した後には青になってて。でも、びっくりしたんですけど、「CB PAC」さんに使っていただくと、柿木さんがチョイスしたんじゃないかってぐらいお店にマッチしていて。結果的に良かったねってよく言ってます(笑)

本田:青い家が目印になって探すときのシンボルにもなるし、周りの民家との差別化もできていますよね。

柿木さん:それはよく言われます。最初は派手だなと思ってすごく嫌だったんですけど…(笑)でも、家を借りたばかりのころにDIYを手伝ってくれた友達が「目立つからいいじゃん」って言ってくれて、そういう考えもありだなと思えました。

 

なぜセレクトショップなの?

−−ここで、オーナーさんへの贈り物に「CB PAC」をよく利用するという殿塚から、柿木さんの商品の選び方について質問がありました。柿木さんのセレクトした商品は、贈り物にすると必ず喜ばれるんだとか。

 

柿木さん:千葉のセレクトショップっていうと、特産品を扱う千葉のアンテナショップみたいに思われることがあるんですけど、そんなことはなくて。千葉のいいものっていうよりも、“千葉「で」いいものを”っていう視点なんですよね。
また、セレクトの基準としては「贈り物になるもの」という視点も入れています。いくらいいものでもあまりに高すぎると買えないですし、パッケージが良くなかったら人に渡そうとか、リピートして買おうとはなかなかならない。そういういろんなことをクリアできるのが「贈りもの」って一言なのかなと思ってます。

−−大学生の頃から千葉のセレクトショップをやりたかったという柿木さん。長年かけて集めた知識を、今やっとアウトプットできているのだといいます。

柿木さん:高校卒業後、新宿の兄貴の家に居候してたときに、近くにあった大きな書店になんとなく行ったら、たまたまナガオカケンメイさんの本を見つけて。そこで、地方に埋もれているプロダクトにもう一度スポットライトを当てる仕事の存在を知りました。それが今の活動の根っこです。

殿塚:その本を読んですぐに、「この道で行くぞ」って決めたんですか?

柿木さん:きっかけのひとつではあるんですけど、同じことは僕には到底できないなと感じていたので、小さなカフェを併設させつつ小ぢんまりとやれたらなんて考えていました。それが21歳くらいのとき。

殿塚:結構早く決めていますよね。そこからどうやってお店のオープンまで繋がっていくんですか?

 

 

柿木さん:どうやったら開業できるかをずーっと調べてました。大学の講義中とかも、ずーっと手帳に書いて。

殿塚・本田:へー!

本田:本から影響を受けたとはいえ、そこまで熱い思いになる覚悟ってなんだったんですか?

柿木さん:僕そんな、覚悟とかなかったんですよね(笑)千葉にナガオカケンメイさんがやってるようなお店とか活動がないんだったら、じゃあ一個ぐらいあってもいいよね、くらいの軽い気持ちというか…。
それとやっぱり、最初の初期衝動がガツンときたのが大きかったんだと思います。これはすごい!みたいな。

殿塚:千葉のことは好きなんですか?

柿木さん:いや、そんな好きじゃない。

殿塚・本田:(笑)

 

 

柿木さん:千葉のセレクトショップをやっているのは、単純に出身地だからって理由です。好きが強すぎちゃうと、視点がずれちゃう気がして。
千葉のおいしいもの、格好いいものだからオッケー、ってなっちゃうのも嫌だったので、なるべく引いて見ているというか。他の地域の全く知らない人が見ても、これはいいよねってモノを置きたいので。

 

社会人経験を経て、開店へ

殿塚:お店をやるって決めてからオープンするまでの間、何をされてきたんですか?

柿木さん:まず、「CB PAC」ってお店を30歳までにやろうって決めたんですよ。それを逆算して、22歳から30歳をどうしようって。

本田:しっかりしていて自分が恥ずかしい…。

柿木さん:大学3年生ぐらいまでは就職する気もなくて、フリーターで開業資金を貯めようかとも思っていたんです。でも、あるとき大学で外部講師として、新潟で糀の甘酒を使用したドリンクスタンドをはじめた会社の社長さんが講話を開いてくれて。そのときに「あ、この人の下で働きたい。」って思って、その会社に応募したんです。
最初は学生だったので断られたんですけど、もう1回「いや、でも働きたいんです」って言ったら、「面白い子だ」みたいに思ってくれて。大学4年生のときにアルバイトで働かせてもらえるようになって、そのあと新卒で入社しました。

 

 

殿塚:どのくらいいらっしゃったったんですか?

柿木さん:3年ぐらいでやめるって自分の中でははじめから決まっていて。入社してすぐくらいから、社長とか上司には、今のお店をやりたいって話はしていたんですよ。だから、去年オープンしたときは上司も「お前ほんとにやったのか!」ってびっくりしてました(笑)

殿塚:3年で辞められて、すぐに「CB PAC」をはじめるんですか?

柿木さん:カフェを併設したいと思っていたので、食事は何を出すか考えたときに、パンだったらいいのかなってすごくざっくり思って。それで、パン屋の製造の仕事をはじめました。パン未経験なんですけど。

殿塚・本田:(笑)

柿木さん:そのときも「こういうお店をやりたいんです」ってはじめにオーナーに話してて。で、パン屋さんの後にフリーターの期間を経て開業資金を貯め、今に至る感じです。

本田:その期間に「やっぱりサラリーマンやっちゃうかあ」とか、意志がブレることはなかったんですか?

柿木さん:友達と飲むときとか、今の奥さんとつきあってるときとかもずーっと、「こういうお店をやりたいんだよね」って話をしていて。365日あったら360日くらい、手が空いたらそれだけを考えてましたね。

 

 

本田:熱い…。

殿塚:でも、そもそもどうして「CB PAC」って名前にしたんですか?

柿木さん:僕の父親が「シービーパック」って名前の紙袋の製造業をやっていて、それを真似して、表記を変えただけです。

本田・殿塚:へー!

殿塚:名前はずっと決めてたんですか?

柿木さん:そうですね。お店の名前はもう、決めちゃおうというか。

殿塚:それも潔いですよね。「CB PAC」って、何のお店か一見わからないじゃないですか。

柿木さん:ネットとかでよく「店名は何を売っているかわかった方が認知されやすい」みたいに言われているのを見るんですけど、でも、まあいいかなって。

本田:でも、確かに最初は「柿木さん」じゃなくて「CB PACさん」って呼んじゃうくらい、全部がマッチしてますよね。

 

一周年を迎えて、振り返る

−−そうして念願のセレクトショップを開業した、柿木さん。収録時、ちょうど1周年記念を迎えようとしている頃でした。柿木さんにとってこの1年は、どんな1年だったのでしょう?

 

 

柿木さん:この1年は、やっぱり、現実を知ったというか。楽しいことだけじゃなくてつらいことの方が多いっていうのは、身をもって知りました。自分で何かをやってる人たちってすごいなって改めてわかりますね。

本田:例えばどんなところで壁にぶつかりましたか?

柿木さん:売り上げですよね。ただ、1年目の今から売り上げをすごく重視しているかといったら、そんなこともなくて…。

殿塚:僕も一応お店をやってる身として、超儲けたいっていうよりも“続けたい”って気持ちがあって。

柿木さん:そうですね!続けたいですね。

殿塚:そのために、これからどうしていきたいですか?

柿木さん:千葉のことをもっと掘り下げたいです。縦長なこの県だと、いいお店やおいしいもの、素敵なものを作ってる作り手の人がたくさんいても、それらがポツポツと点在してしまっていて、なかなか買いに行きづらいこともある。
この1年の中でも、「あそことあそこの商品が一緒に買えるのはうれしい!」ってお客さんに喜ばれることがあります。そうやって、いいものがもっと買いやすくなるように、千葉の「いいもの」を一箇所に集めた店にしたいです。

 

本田:お店に置く商品は、これからも開拓していくんですか?

柿木さん:そうですね。今も時間が空いたときにいろんなお店に足を運んだり、遠かったら取り寄せてみたりして選んでます。食べてみたり実際に使ってみると見えてくるものもあり、見送りになってしまうこともありますが。

殿塚:買わせてもらう側からすると、柿木さんがいいって言ってるんだからいいだろう、みたいな信頼がすごくある。そこを、ビシッと選べるのがすごいですよね。

柿木さん:主観を全開にしてるところはありますね。ナガオカケンメイさんの本にも書いてあったんですけど、行政がやるようなアンテナショップだと、商品を平等に置かなきゃいけなくて平置きになってしまう。
54市町村あるからといって、その54個から無理やりにでも選びとらなきゃいけないのは、やっぱり面白くないじゃないですか。

本田:その中で柿木さんに選ばれてるモノたち、すごくないですか?

殿塚:逆に作り手の方も、柿木さんに選んでもらえるように作りたいって気持ちがでてきそうですよね。

 

「CB PAC」のこれから

–今後はオンラインなどでも販売の幅を広げていきたいという柿木さん。最後に、お店のこれからについてお聞きしました。

 

 

柿木さん:一軒家なので2階を活用したいです。ワークショップをしたり展示をしたり、いろいろやってみたい。金継ぎとかも楽しそうかなって。

本田:いいですね!展示したいな。

殿塚:え、本田さんが?

本田:そうですね。

殿塚:えっと、見送りになる可能性が(笑)

一同:(笑)

 

 

柿木さん:まずは2階の1部屋に今販売している本を並べて、閲覧室みたいにするところから始めようかなって。お客さんにのんびりしてほしいです。

–お話の中で「続けることに意味がある」と言っていた柿木さん。この先2周年、3周年と歴史を刻んでいく中で、「CB PAC」がどんな進化を遂げていくのか、今から楽しみです!


CB PAC
営業時間:お店のインスタグラムをご覧ください。
場所:鎌ヶ谷市初富本町2-8-34
新京成線 初富駅より徒歩5分
電話番号:080-7797-3206